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2018年11月26日公開

受けていますか?女性のためのがん検診

2度の子宮がんを経験して
女性のみなさんに私が伝えたいこと

原千晶さんインタビュー【後編】

原千晶さん

「がんあるある」を
みんなでしゃべりたくて患者会を立ち上げた。

30歳で子宮頸(けい)がん、35歳で子宮体がんと2度のがんを経験された女優の原千晶さん。現在は、女優業のかたわら、患者会を運営したり、がんに関する講演会を行ったりと、啓蒙活動にも力を注いでいます。がんとの闘病を振り返って、今思うこと、女性たちへのメッセージ、今後の活動などについて語っていただきました。前後編でお届けします。

患者会「よつばの会」の立ち上げについて教えてください。

原さん:がんの公表をきっかけに、私のブログを中心に、全国のみなさんとやりとりすることがふえました。そのうち、「ネットのやりとりだけでなくて、みんなで会って話したいね」と話が盛り上がっていきました。私自身が、みなさんとお会いして話しをしたくて仕方がなかったんですね。たとえば、「抗がん剤の副作用はどう?」とか、「ウィッグ(医療用のカツラ)はどこで見つけた?」とか。いろんな「がんあるある」をしゃべりたくて……。
 とくに女性は、共感し合うことで力を得ていく部分があると思います。それで、「よつばの会」と名前をつけて、友だちがやっていたサロンを借りて、午前と午後に8人ずつで集まることになりました。みなさんと話したことで、孤独感に苛まれていた気持ちがパーッと解放されたというか、同じ病気を経験した者同士しかわからないことを共有できて、笑ったり、泣いたり……。本当に癒やされたし、楽しかったですね。

「よつばの会」はどれくらいの頻度で開催しているのですか?

原さん:最初に開催したのが2011年の7月でした。それから3~4カ月に1回くらいのペースで開催しています。子宮頸がん、子宮体がん、乳がん、卵巣がんといった女性特有のがんの患者さんが主体となって集まり、これまでに延べ650人の方に参加していただきました。目の前のことをコツコツとやっているうちに、気づいたら多くの出会いを経験していたという感じです。
 私が東京に住んでいることもあって、初めは関東が中心でしたが、全国各地に講演会などで呼んでいただけるようになり、せっかく行くのだからと、北海道、大阪、名古屋、福岡など各地で開催しています。
 2017年の春には、「よつばの会」の拠点みたいな形で使えたらという思いから、女性専用サロン「Seribu(セリブ) Kristal(クリスタル)」をオープンしました。インドネシア語で「千の結晶」という意味です。私の名前にかけつつ、この活動が結晶のように少しずつ形になっていけばいいなという思いを込めてつけました。ささやかなスペースですが、とても気持ちよく過ごせる空間です。女性のからだ、健康、美容、生きがいなどのサポートに、お役に立てたらと思っています。

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癒やしだけでなく、情報源としての価値が大きくなってきた

「よつばの会」の立ち上げから7年が過ぎました。

原さん:患者会をやっていると、「傷をなめあっているんでしょ」なんていわれることもありました。もちろんそういう部分も否定しません。やっぱり癒やされたいし、「自分だけじゃない」と確認したい。でも、それだけじゃなくて、がんに関するさまざまな情報を得ようと、積極的で前向きな姿勢で来る人がほとんどです。
 たとえば、「こんな手術をしました」とか、「こんな抗がん剤を使っています」とか、お医者さんからもらう情報とは違う、患者ならではのリアルタイムな情報交換です。
 インターネットが普及して、情報は個人でも集められますが、出典のあやしい情報や、間違った情報もあったり……。だからこそ、直接聞く生の声や生の情報が貴重なんですよ。

人生で体験できなかった穴は別のもので埋められる

友人からかけられた言葉にとても勇気づけられたと聞きました。

原さん:年上の友人から「人生で体験できなかった大きな穴は、別の何かで埋まるようにできている」と、教えられました。この言葉は、患者会を立ち上げたりする原動力に結びつきました。「病気によってできたぽっかり空いた穴は、あなたを必要としてくれる何かがきっと埋めてくれるはず」と彼女は話してくれて、それにすごく勇気づけられました。実際、「よつばの会」などを通して、徐々に穴が埋まっていく感覚がありました。
 ある1人の会員さんが、ツイッターを見せてくれたんです。私がテレビ番組に出て、がんの話をしたあとに、それを見た方がツイートしてくれていて、「原千晶さんは、病気によって子どもが産めなくなったかもしれないけど、今、『よつばの会』をコツコツと育てている。彼女はちゃんとお母さんだよ」と書かれていました。
 ちょっと泣きそうになりました。そんなふうに見てくださっている方がいることに感銘を受けましたし、何かを育てるということを大切にしたいなと思えて、とてもうれしかったですね。

大事な人たちを思いっきり巻き込んでしまった

大きな支えになったというご主人のことを聞かせてください。

原さん:子宮頸がんのことを告げたあと、彼は1カ月おきくらいに、「病院に行かなくていいの?」と聞いてきました。そのとき、私は「仕事をがんばりたい」モードだったこともあって、「もう、うるさいな」みたいな感じで対応していました。そして、つきあいはじめて3年たつくらいのころ、再びがんが見つかりました。私自身以上に、彼を傷つけてしまったと思っています。
 彼は何もいいませんけど、「もっとしつこく病院に行けっていえばよかった」と、自分を責めたと思うんですね。でも、とにかく切り替えて、今は病気を治して元気になることを目指そうと励ましてくれ、闘病中もずっと寄り添ってくれました。

やさしいご主人ですね。

原さん:1度だけ、彼が泣いたことがありました。がんの再発がわかって、また通院が始まるときでした。重い気持ちで朝起きたら、おにぎりが4つ、テーブルに置いてあったんです。元気づけようと、彼が作ってくれたんです。
 私はそれ見て泣いちゃったんですよ。「ありがとう」という気持ちももちろんですけど、張り詰めた気持ちがゆるんでしまい、「病院に行きたくない、逃げてしまいたい」と弱音を吐いて、子どもみたいに泣きじゃくってしまったんです。
 そうしたら、それまで何があっても怒りも嘆きもせず、まして泣いたりしなかった彼が、ポロポロと涙をこぼしていたんです。何をいわれるより強烈に心に響いて「ああ、この人を巻き込んでしまった。もうがんから逃げてはいられない」と決心しました。
 そして、おにぎりを持って、2人で病院に行きました。

ご主人の人生も変えてしまったと?

原さん:主人は子どもをもつことができない人生になってしまいました。そのことについて主人のご両親も理解したうえで「千晶さんがいちばんつらいんだから、お前が支えてあげなきゃだめだ」といってくれました。本当にありがたくって涙がこぼれました。同時に、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
 私の場合、きちんと対処すれば避けられたかもしれなかったのに、自分でそれを怠ってしまった。そして大事な人たちを、巻き込んでしまったという思いが強くあります。
 がんという病気は、本当に周囲の人を大きく巻き込んでいくのです。

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原さん:私は子どものころから小さいものが好きなんです。私の世代だとリカちゃん人形とかバービーとか、シルバニアファミリーとか。この小さい世界で「ごはんだよ」ってあげたりするのが、とにかくたまらなく好きなんです。大人になってもその楽しさが忘れられませんでした。そしてあるとき、ハンバーグとかケーキとか、いろんな食べ物のかわいいミニチュアを見つけたんです。もう心を奪われてしまって、オークションで買ったりして集めました。そしてあるとき、本で自分でも作れることを知ったんです。

自分でも作ってみたのですか?

原さん:はい! おもに樹脂粘土というものを使って作ります。最初は見よう見まねでやっていたのですが、なかなか難しくて。いろいろと調べていたら、そういうことを教える教室があるとわかって、すぐに申し込み、約1年間通いました。作品はインターネットで公開したり、友だちにプレゼントしたりして楽しんでいたのですが、なんと! 今年の夏、お世話になっている日本ミニチュアフード協会さんの期間限定ショップで、私もアーティストの1人として、ミニチュアフード作品の販売をしたんです。
 何か興味をもって資格を取ったり、みなさんに伝えたりするのはすごく好きなのでアロマテラピーの資格ももっています。「よつばの会」は女性のみなさんが集まるので、リラックスしてもらえるような香りをたいたり、アロマグッズをプレゼントしたりしています。

ありがとうございました。最後に、がんを体験した人、そして読者へのメッセージをお願いします。

原さん:自分が、闘病中に狭い視野で苦しんでいたので、「1人で悩まないで」と伝えたいですね。いろいろな患者会があるので、行きやすいところに行って、経験者の話を聞くだけでも勇気をもらえるし、背中を押してもらえると思います。
 みんな不安を抱えています。でも、一緒に悩みを共有できる仲間もいれば、「こんなに元気になれるんだよ、大丈夫」と乗り越えてきた道のりを語ってくれる仲間もいます。どうか後ろ向きにならずに、いろんな人の力を借りて元気になってください。
 そして、がんになっていない人は、「自分は大丈夫だ」「まだ若いから心配ない」なんて油断をせずに、必ず検診を受けてください。私のような人をふやさないためにも、これだけは必ず守ってほしいです。

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